剱岳 点の記について
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明治40年 柴崎芳太郎率いる測量隊は、剣岳に登頂するもののあまりにも険しいルートだったために、
約60kgはある重い標石/三等三角点を運び上げることが出来ず、
木材1本を針金で支えた臨時の三角点/四等三角点の設置に留まってしまった。
そのために「点の記」の記録には残らなかった。
それから登山ルートは徐々に整備されていき、平成16年8月24〜25日に地元富山の高校生や若手測量官などの
手によってようやく三等三角点を新設することが出来た。これまでに約100年の時が経っている。
(なお、今回新設する際の観測地点となった場所は、下記の剱御前と南千人山です)。
それらの苦労を考えると、普段気にも留めない三角点が聖域なものに思えてきます。
映画「劒岳 点の記」を通して、登山の楽しみ事がまたひとつ増えましたね。
また、柴崎芳太郎率いる測量隊が剱岳登頂した以前に修験者が初登頂したという年代を、
山頂で発見された錫杖頭のX線分析をすることで調べるという試みも行なわれたのですが、
結果その年代は特定出来ず、今でも考古学者が調べた「奈良時代末期から平安時代初期」ということになっています。
これもまた神秘的で、興味がそそられますね。
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剱岳に三等三角点新設する際の観測地点となった場所(平成16年8月24〜25日)
No
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等級
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三角点名
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現在の地名
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標高
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緯度
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経度
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1
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三等
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剱岳
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剱岳
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2999m
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北緯36度37分24秒
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東経137度37分02秒
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2
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三等
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別山
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剱御前
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2777m
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北緯36度36分08秒
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東経137度36分31秒
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3
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三等
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西千人
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南千人山
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2173m
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北緯36度38分07秒
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東経137度39分33秒
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剱岳 三等三角点
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以下は映画「劒岳 点の記」を通じて、地元富山におけるその後を追跡したものです。
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映画「劒岳 点の記」先行上映された富山ファボーレでは、公開記念として木村大作監督のトークショーが行われた。
撮影の裏話のなどが聞けて、本物志向に拘る監督の生き様が映画にも表れているような。
故黒澤明監督の映画作りにも携わったことのある方だけに、その情熱も人一倍でしたね。
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こちらは剱岳山頂で出土した修験者の残した「錫杖頭」が展示されている
富山県立山博物館。
あの感動的な剱岳登頂シーンが脳裏に浮かびますね。
その出来事を記録した明治40年頃の新聞「富山日報」も閲覧することも出来るので、
映画にハマった人には興味深い博物館です。
もっと詳しいことを知りたい方には、
上市町民有志の方々から集められた剣岳に関する書籍や資料などが展示されている
上市町の西田美術館がお勧めです。
またこの2階窓からは、剣岳を正面に望めることが出来る最高の環境でもあります。
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こちらは、富山県立山博物館に隣接する教算坊。
昔の立山登拝や儀礼など行った人が、ここを宿坊として利用されていた建物。
館内は「立山曼荼羅」や「天界の絵図」などが展示されていて、立山信仰の世界を詳しく知ることが出来る。
また、日本庭園風の広い庭もあり、静かでとても落ち着ける場所だ。
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こちらは、富山県立山博物館に隣接する雄山神社祈願殿内の立山杉群。
太くて高くどっしりと構えた立派な杉で、樹齢約500年あるとか。
柴崎芳太郎率いる測量隊が険しい剣岳に向かう映画のワンシーンにも採用され、独特の雰囲気を醸し出している。
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こちらは、映画では100年前の富山駅を見立てた芦峅寺駅。
構内には映画の様子をパネル展示で紹介されていて、撮影の苦労や裏話も書いてある。
また、映画で使用された木製入札ゲートは、今もそのまま残され使用されている。
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こちらは、立山山麓家族旅行村に立てられている宇治長次郎像。
ちょっと離れたところにある大山歴史民俗資料館
では、平成21年6月13日〜7月12日まで企画展「宇治長次郎展」が公開されている。
彼が使用していた金剛杖をはじめ当時の登山装備が展示されていて、
これら軽装備で剣岳登頂を成し遂げたのかと思うと、改めてその技量に感心させられます。
なお、宇治長次郎は柴崎芳太郎率いる測量隊の案内だけでなく、黒部の上ノ廊下や下ノ廊下などの人の入り込めない沢も開拓した超人。
右写真の下ノ廊下の見所のひとつ「十字峡」です。
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また、測量隊と同行した宮本金作は、宇治長次郎の右腕として活躍した山人。
黒部の上ノ廊下の金作谷(左写真)は、彼の名前をとってつけられたもの。
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こちらは今は無き立山温泉跡地と近場の間欠泉、その上流には源泉が今も残っている。
弥陀ヶ原を通って松尾峠から入山できますが、今なお砂防工事中の立山カルデラ区域のため、あまりお勧めできません。
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こちらは有名な長次郎谷で、柴崎芳太郎率いる測量隊が剣岳踏破した際に通ったルート。
ここをつめると熊の岩に突き当たり、クライマーが好む岩場が広がります。
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そして長次郎谷最上部の急斜面、ここから劔岳山頂に登りつめました。
修験者のお告げ「雪を背負って登り、雪を背負って降りろ」を思い出しますね。
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なお、左写真は修験者がお祈りしていたお地蔵様。
室堂山荘から徒歩5分ほどの東側岩場にある「玉殿岩屋」、時間があるときにでも立ち寄るのもいいですね。
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No
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参考文献
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著者
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発行
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1
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劒岳 点の記
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新田次郎
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文芸春秋
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2
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剱岳に三角点を
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山田明
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桂書房
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